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今週は、ダボス会議に参加するため、スイスに来ています。

今年のダボス会議のオープニングの講演は、
フランス大統領のサルコジ氏でした。

とても意外でしたが、
フランス大統領の参加は、今年が初めてとのこと。

フランスは、
G20の主催国になることもあり、
欧州でのリーダーシップを超えて、
世界でのリーダーシップを発揮したいと
今回のダボス会議の参加を決めたと
言われています。

間近で、講演を聴いて、
その目論みは、大成功だったのではないかと思います。

今までダボス会議関連で聞いた
どの国家元首よりも力強く、魅力的で、
思想と哲学を感じさせる先進的なスピーチでした。

一方で、金融市場に関わる人々にとっては、
あまりに挑戦的過ぎて、
反論のある人も多数いたようです。

簡単に、スピーチの内容を紹介したいと思います。
言葉だけの紹介なので、その姿や声から伝わる行間を
届けられないのが残念です。。

以下、サルコジ大統領のスピーチの概要です。

ーーーーー

まず、今回の金融危機に関して、この場にいる人を含め、
全員が責任を感じなくてはいけない。

金融危機を経て、保守的になってはいけない。
勇敢にリスクをとり、創造的に、
新しい社会を作っていかなくてはいけない。

近代化の過程で、大切な価値観が失われてきた。
貯蓄がグローバル化し、金融が全てになってしまった。

不労所得で冨を得る人が出て、
一生懸命働く労働者には
何も残らない世界になってしまった。

金融という努力無しに儲ける投機的活動は、
雇用も生み出さなかった。

今が全て、今が大切で、
将来はどうでも良いという価値観が蔓延した。

その一つに、
会計基準という大きな問題がある。

時価会計によって、
一分一秒では変化するはずのない企業価値が、
株価とともに変化するようになってしまった。
今の株価を重視するあまり、
企業の将来価値が下がってしまう状況を招いた。
会計基準は大きな問題だ。

いまこそ、我々は、資本主義に何を求めているかを
内省するときだ。
資本主義の次に、どんな主義が来るかという議論をするのではなく、
どんな資本主義にするかを考えるときだ。

そして、それは、
学者や政治家などの専門家に委ねてはいけない。
私たち一人ひとりがどういう資本主義を求めるかを
考えなくてはいけない。

市場に全てを任せてはいけない。
私たちが考えることを放棄しては行けない。

金融危機前に、自由を進めすぎて、
民主主義を弱体化してしまった。
一人ひとりが考え、行動する民主主義を
立て直さなくてはいけない。

過大な規制緩和は悪影響を及ぼす。

グローバル化が言われ始めた頃のイメージは、
他者から何かを得るというイメージだった。
しかし、これからは違う。
自ら人類のために何ができるかが、
これからのグローバル化に必要な思想だ。

経済を目的にする時代を終え、
経済を手段にしなくてはいけない。
そのためにはどうしたら良いのか。
そのための資本主義とは、どのようなものなのか。

今は、資本主義の危機なのではない、
また、反資本主義でもいけない。
どのような資本主義があるべきかを考える時だ。

良識が求められる時代だ。
ルールや原則ではなく、ガバナンスが求められる時代だ。
共通の同義性を求める時代だ。

危機後の世界を危機前の価値観で見てはいけない。

金融機関などで、多額の報酬を得ている人たちがいる。
危機によって他の人々が苦しんでいるのに、
多額の報酬を得るということは決して褒められることではない。

市場経済を破壊する人を取り除くべきだ。
雇用を生み、冨を生み出す、市場経済を作る人を
求めなくてはいけない。

G20の議長国として、心していることがある。
何かを決定するのは大切だが、もっと大切なのは実行することだ。

危機を乗り越えつつある今だからこそ、
保護主義に行き過ぎてもいけない。

会計基準の見直しも、G20で行う。

ILO加盟国でありながら、
ルールに批准していない国もあるし、
COPにおいても、数値目標を提示していない国もある。
フランスから、国際機関や
国際的・世界共通のルールを提唱したい。

その意味でも、
ブラウン首相が提唱する温暖化に対する取り組みを支持したい。

あえてここで、皆さんに問いたい。

銀行家の役割とは何か?

投機することではないはずだ。
借り手のリスクを計測することではないのか。
私は、オバマ大統領の金融規制に賛成したい。

そして、
通貨について口にすることを問題だという人がいるが、
それもまたおかしいと思う。
通貨ほど重要なものについて、
国家元首等責任ある人間は、通貨の安定の必要性に、
責任を負う立場だ。

金融システムの改革をG20の課題にする。

かつてのグローバル化の議論において、
国がなくなる、国境が消える、
ノマドの時代が来ると言われたが、
それは違った。

国に帰属することを求める人が増えた。
絆が重要な時代になった。
それは、
「市民」というものが新たな泉を生み出したとも言える。

我々一人ひとりの「市民」が、未来に対して責任を持つべき時だ。

最後に付け加えておきたい。
国に帰属し、絆を大切にすることが、
実は、世界を一つにし、
人類のために考え行動する人を生み出すことにつながる。

ーーーーー

スピーチを聴いていて、
金融に対する批判は、行き過ぎた感じもありましたし、
労働者を意識しすぎなのではないかという感じもありましたが、
議論を呼ぶほどの揺るぎない主義主張は、
やはり人の心を動かすものだと思いました。

そして、フランス革命を興した国として、
その根底に流れる「市民」の力と存在が
21世紀に新たな形で主流になってくることの必要性を
感じさせるスピーチでした。

それは、ユヌス氏をはじめとしたアジアの人たちや
宗教家が提唱する草の根による革命論と通じるところがあり、

「欧米からアジアへ」という感覚よりも、
「米英からユーラシア大陸へ」という感覚を強く持ちました。

さて、そうなると、日本はどうあるべきか。

ユーラシア大陸において、
欧州とアジア諸国をつなぐハブになるのか、
それとも、
ユーラシア大陸と米英をつなぐハブになるのか。

どちらにしても、
どちらの思想も習慣もある程度理解できる日本は、
架け橋としての存在である
という感覚が益々強くなりました。