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ダボス会議の一つのセッションで、
地元の中学校で、ムハマド・ユヌス氏の話を聞く
というものがありました。

ムハマド・ユヌス氏といえば、
マイクロファイナンスで有名な
グラミン銀行を作った方で、
ノーベル賞受賞者です。

ユヌス氏のスピーチの第一声は、
「What is money for you?」
でした。

そして、お金というものが、
人の人生を左右するものであることを話された後、
グラミン銀行を設立した経緯とご自身の思いを
語られました。

その一部をご紹介したいと思います。

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私は、グラミン銀行では、
銀行のプロセスの全て変えました。
バングラデッシュの普通の銀行が行っていることと、
全く反対のことをしたのです。

お金を融資する際には・・

都市の人ではなく、田舎の人を対象に
担保を求めず、無担保に
法律家や細かなルールから、信頼に
書類へのサインから、仲間との約束に
男性中心から、女性中心に

と、全く反対のことをした結果、
今では、800万人の人に融資をする銀行に
育ちました。貸し倒れもほとんどありません。

貧しい農村で、酷いお金の貸し付けをされ、
貧困から一生抜け出せない生活をしていた人たちを見た時、
銀行に相談に行きました。
けれども、銀行家たちは、リスクが高い人たちには
貸し出せないと言いました。

だから、私は、自分がお金を借り、
自分のお金を農村の女性たちに貸しました。

そして、工夫をし、結果的に、
銀行と反対のことをするようになりました。

私は、金融業の専門家ではありません。
けれども、多くの人が貧困から少しずつ
脱出することができる仕組みを生み出すことができました。

問題を解決するためには、
エキスパートになってしまってはダメなのです。

全てのアイデアは、常識から生まれて来るのです。

全てのルールは、誰かが作ったものです。
あなたもルールを作ることができるのです。
与えられたルールを全て、鵜呑みにしてはいけないのです。

そして、金融危機は、まさにルールを変えるチャンスです。

グラミン銀行がお金を貸し出した農村では、
鳥目の子どもたちがたくさんいました。
夜になると見えなくなるのです。

それは調べてみると、ビタミンAの不足で
あることがわかりました。

そこで、グラミン銀行では、
お金を融資すると同時に、
仲間を募って、野菜の種を売る事業を始めました。

農村で野菜を作り、自らも食べ、
販売もする。

4年後、鳥目の子どもはいなくなりました。

これが、ソーシャルビジネスです。

お金を儲けるだけではなく、
課題を解決するビジネスです。

有名な食品メーカーであるダノンも、
ソーシャルビジネスを始めました。

最初、私がダノンのCEOと話した際には、
彼は私の言っている意味が分からなかったようです。
バングラディッシュなまりの英語のせいです。
そして、私も、彼のフランス語なまりの英語が
全くわからず、分かれた後、手紙を書き、
私の思いを伝えました。

そして、農村の子どもたちが週二回食べることで
必要な栄養を補給できるヨーグルトの開発と
販売を実現することができました。

もちろん、スムーズではありませんでした。
何度も何度も議論を繰り返した結果です。

ビジネスも同じです。

ビジネス=お金を稼ぐこと。
このルールは誰かが作ったルールです。

なぜ、このルールを変えることに
チャレンジしないのでしょうか?

なぜ、ビジネスの目的は「稼ぐ」という
一つだけなのでしょうか。

ビジネスに取り組む人間は、
家族、健康、友人など、いろんな目的を持っています。
人間はロボットではありません。
いろんな次元で、生きています。
そして、自分の意志で、時と場合に応じて、
その目的を選んで生きています。

ビジネスにも、多元的な目的があって
いいのではないでしょうか。

学生たちにも言いたい。

勉強をして学校に行くこと=良い仕事につき経済的に豊かになること

そんな風に、誰かが決めた一つだけの目的に
絞る必要はありません。

大切なのは、まず使命を持つことです。

アディダスの例を話しましょう。

貧しい農村では、ほとんどの人が靴を履いていません。
1ドル以下の靴を作って欲しいと頼みました。
これは大きな議論を呼びました。

1ドル以下の靴を売ったら、
アディダスのブランド価値が落ちる
というのです。

違うのです。

靴を履くというのは、
おしゃれでも快適性でもなく、
健康のためなのです。

貧しい農村では、靴がないために、
足の裏からばい菌が入って、
病気になる子どもがたくさんいるのです。

靴の使命は、
先進国と途上国では違うのです。

靴は、人が健康であるためにあるのです。

おしゃれのためのブランドではなく、
人を病気から防ぐためのブランドが必要なのです。

どうです?

簡単なことでしょう。

基本的に大切なことは、シンプルなのです。

多くのことを考える必要はないのです。

さて、こんな話をすると、
みんな悩みます。

何をしたら良いのかと。

一つアイデアを提示しましょう。

二つのリストを作ってください。

一つ目は、嫌いなことのリストを作ってください。
こんなことは嫌だということを順番をつけて書いてください。

そして二つ目のリストは、好きなことのリストです。
こちらも順番をつけてください。

そして、この二つを眺めるのです。
そうすると、あなたの求める世界が見えてきます。

そうすれば、あなたが作るべき必要なルールが
見えてきます。

ルールを作るために必要なものは、
あなたの求める世界です。

使命がなければ、ルールも生まれません。

けれども、また疑問が生まれてくるでしょう。
私はソーシャルビジネスを立ち上げるだけの
勇気も能力もないと・・。

大丈夫です。

今は、インターネットがある時代です。
ネットにアイデアをアップするだけで、
それは多くの人の助けになります。
情報を提供することもまた、
ソーシャルビジネスの担い手であることを忘れてはいけません。

最後にもう一つ。
ソーシャルビジネスにおいて、大切なのは、
selfless(無私無欲・利他)であることです。

selfish(自己中心) businessではなく、 selfless business。
これがソーシャルビジネスです。

新しいビジネスやルールは、誰にでも作れるのです。
私にだって、銀行が作れたのです。

皆さん、どんな小さなことでも、問題を見つけ、
それを減らす努力をしてみてください。
そこには、必ず希望があります。

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ユヌス氏のお話を聞くと、とにかく元気がでます。
何かできそうな気がしてきます。

一緒に聞いていた中学生たちも
目をキラキラ輝かせていました。

私も、同じく・・。

この後、ユヌス氏と立ち話をする機会があり、
大変、共感したと申し上げたら、

「それは嬉しい。結構、反対する人もいるんだよ」

とおっしゃっていました。

ノーベル賞をもらっても、
全ての人が賛同してくれる訳ではありません。

有名になるほどに、厳しい声も聞こえてくる。

そんな中でも、信念を貫き通されているユヌス氏から、
勇気と力をいただきました。

このセッション以外にも、ユヌス氏からお話をうかがいました。

その内容は、また改めて、
ブログに掲載したいと思います。