BLOG

ユヌス氏が、企業と合弁で立ち上げ、
運営しているソーシャルビジネスについて、
ダノンとの合弁企業を例にお話をしてくださったので、
ご紹介したいと思います。

1)ダノンのソーシャルビジネス、2つの課題

ダノン会長が、ユヌス氏との出会いを機に、
ソーシャルビジネスをはじめて見たいと思った。
しかし、すぐにそれが具体的になったわけではない。
実現までには、数年の年月を要した。

それは以下の2つの課題があったから。
1、何をビジネスとして設立するべきか。
2、資金をどこから出すか。

先に解決したのは、1、何をビジネスにするか。

そもそもソーシャルビジネスとは、
具体的な課題を見つけ、それをビジネス手法を用いて解決すること。

バングラデッシュの貧困の村における課題の一つは、
子どもの栄養失調だった。
いかにして子どもに栄養を与えるか。
その課題をダノンは、自社のビジネスノウハウを活かして
解決することにした。

その方法は、小さな子供用のヨーグルトを作ることだった。
貧しい人でも、週に一度は買える値段であり、
かつ、週に1度程度食べることで、栄養を補給できる
ヨーグルトである必要があった。

これは、ダノンにとっても大きな挑戦だった。
小さくて安価で、かつ様々な栄養素を加え、
かつ子どもが美味しいと思う味のヨーグルトを作るという
課題に直面した。

さらに、バングラディッシュでの生産をするためには、
工場のラインなど、これまでとは異なる環境下で
様々な工夫をすることとなった。

2)株主は、賛成してくれるのか?

そして、それらを確立すると同時に、課題となったのは、
そのビジネスを設立するための投資資金の出所だった。

ダノンの利益や資産から、その資金を出すためには、
株主の同意が必要である。
会長が世界の貧困を解決したいと願っても、
会社のお金をそれに自由に注ぎ込むことはできない。

そこでダノンが考えたのは、株主に直接、問いかけることだった。

「株主の皆様。バングラディッシュで、貧困者向けの栄養豊富でかつ安価な
ヨーグルトの生産・販売を行うビジネスを立ち上げたいと考えている。
もしこのビジネスに賛同くださるならば、株主が受け取ることができる配当の中から
このビジネスの資金をご提供いただきたい。
配当の全てでなくて結構です。あなたが受け取る配当のうちの何%かで結構です。
その割合を教えてください」

この問いかけに対し、90%を超える株主が、配当の一部をソーシャルビジネスに回すことに同意してくれた。

その結果、グラミンとダノンが、50%ずつ出資するグラミン・ダノン社が設立され、
貧困の村の子どもたちが、栄養豊富なヨーグルトを食べ、健康を得ると同時に、
大人たちも働く場所を得ることができた。

3)ソーシャルビジネスの意外なリターン

この話には、後日談がある。

ダノンの従業員から、会長にクレームが上がってきたのだ。
それは、
「なぜ、株主にだけ、資金の提供を依頼したのか?
我々従業員には、なぜ、その機会を与えなかったのか?」
というクレームだった。

結果、グラミン・ダノンは、従業員からも、資金を得ることとなった。

また、ユヌス氏が提唱するソーシャルビジネスは、利益は上げるが、
それを株主に配当することは一切ない。
つまり、株主が得るのは、社会課題の解決というソーシャルリターンのみであり、
マネーリターンを得ることはない。

しかし、遠回りながらも、ここにはマネーにつながるリターンが
存在する。

それは、ソーシャルビジネスを通じての、既存事業のイノベーションが起きることだ。

ダノンの場合、ヨーグルトに複数の栄養素を入れるという新しい試みは、
現在、既存の商品にも活かされ、新商品の開発につながったし、
制限の多い場所での生産設備づくりは、結果として、
既存商品の生産ラインの効率化にもつながっているという。

既存のビジネスにおいて、イノベーションやコストカットを求めても、
遅々として進まなかったものも、目の前に課題があり、救うべき人がいるとき、
そこで、イノベーションや新たな工夫が生まれてくる。
これは、本業にも大きな恩恵をもたらしてくれたそうだ。

4)なぜ、ソーシャルビジネスは、配当を支払わないのか?

また、ユヌス氏のソーシャルビジネスの話題において、
常に議論となるのが、なぜ、配当を払わないかという問題である。

その問いに対し、ユヌス氏の答えは、以下の通りであった。

当初、グラミン・ダノンでは、配当を払った。
しかし、1%の配当を払ってみると、なぜ、配当が1%なのかという問いが上がってきた。
2%に引き上げてみると、今度は、3%でも良いのではないかという声が上がってきた。
つまり、利益というものは、ロジカルに議論できてしまうもので、配当を払うと決めた瞬間、
そこには、配当を最大化するためのロジカルが生まれてきてしまう。
ソーシャルビジネスの第一義は、利益ではなく、社会問題の解決であるから、
第一義でないことに、労力を使うべきではない。その結論が、配当を一切払わないという決断であった。
払わないと決めれば、そこにはもはや、ロジカルな最大化議論は発生せず、
ビジネスそのものに労力と時間を使うことができる。

したがって、ユヌス氏は、ダノンの体験を通じて、配当を払わないという方針を決めた。
他の人達がソーシャルビジネスを起こし、配当を払うことは自由である。
ユヌス氏は、自身の体験から、払わないことが結果として良いと判断したのだ。
様々なソーシャルビジネスの形があって良い。

私の英語力不足で、誤りもあるかもしれませんが、
ダノンのお話を、私の理解した限りで、ご紹介しました。

また、後日、学生向けのお話なども紹介できればと思います。